ケース別転職対策
現役の建設業関係者が解説する建設業のやりがい、魅力とは?
総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が作成した資料によると、建設業の就業者数は平成9年の685万人をピークに毎年減少。令和4年度では479万人となり、約30%減少する等、深刻な人手不足に陥っています。建設業の技能者は60歳以上が4分の1を占めており、これから引退を控えている事情を鑑みると、さらに人手不足が深刻化するのは間違いありません。
建設業への入職者も減少傾向です。平成14年度は55.1万人の入職者があったのに対し、令和4年度は22.1万人と約60%減少しました。
「3K(きつい、汚い、危険)」、「休みがとれない」、「労働時間の割に給料が低い」 など、多くの方が建設業に持つ悪いイメージが根強く残っているのも要因の1つでしょう。全産業で就活者の売り手市場が続く中、魅力の少ない(と思われている)建設業が選ばれるのは、難しいのが現状です。
建設業は社会資本の整備を支える不可欠の存在であり、今後も持続可能な産業でなくてはなりません。これからの建設業を支える人材を確保するため、官民一体となり、週休2日の導入、長時間労働の是正、積極的な賃上げ等、様々な環境整備に取り組み、確実に成果を出しています。
ひと昔前までの建設業のイメージにとらわれ、転職先の候補から外してしまうのはもったいない!
そこで本記事では、インフラ関係の公共事業を手がける会社に14年間、勤めている筆者が、建設業の魅力・やりがい・休み事情を、実体験をもとにわかりやすく解説します。
昨今の建設業は労働環境が急激に改善し、転職先として魅力ある業界に変わりました。
また建設業未経験の方にも幅広く門戸を開いています!
転職活動に取り組んでいる方、これから取り組もうとしている方は、ぜひ最後までチェックしてみて下さい。
国土交通省が実施した「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」(令和4年6月15日公表)によると、建設業の休日・休暇の割合は、以下の通りです。
建設業全体
4週8休以上 | 全体の8.6% |
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4週7休程度 | 全体の10.0% |
4週6休程度 | 全体の44.1% |
4週5休程度 | 全体の22.9% |
4週4休程度以下 | 全体の13.2% |
不定休 | 全体の1.0% |
その他 | 全体の0.3% |
公共工事の受注が大半を占める会社の場合
4週8休以上 | 全体の18.1% |
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4週7休程度 | 全体の16.4% |
4週6休程度 | 全体の48.7% |
4週5休程度 | 全体の9.1% |
4週4休程度以下 | 全体の6.5% |
不定休 | 全体の0.9% |
その他 | 全体の0.4% |
民間工事の受注が大半を占める会社の場合
4週8休以上 | 全体の5.1% |
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4週7休程度 | 全体の7.0% |
4週6休程度 | 全体の38.4% |
4週5休程度 | 全体の30.2% |
4週4休程度以下 | 全体の16.3% |
不定休 | 全体の2.7% |
その他 | 全体の0.4% |
全体を通すと、4週6休程度が最多となりました。また、民間工事よりも公共工事を主体とする会社の方が、4週8休以上の割合が高いことがわかります。いずれにせよ建設業では、他産業では当たり前となっている週休2日をとれていないのが現状です。
建設業では、週休2日を取れていない会社もありますが、多くの会社がこの状況を打破し、魅力的な入職先・転職先となるよう、週休2日(4週8休以上)の推進に取り組んでいます。
公共工事の場合
現在、国・都道府県発注の工事では、ほぼ100%の工事が週に2日の休みを取ることが発注の条件になっています。市町村発注の工事は、まだこのルールが浸透していない地域があるのも事実です。それでも年々状況は改善しています。例えば、筆者が生活している市町村では、令和6年度から全ての工事で週2日休みを取ることが、発注の条件になりました!
民間工事の場合
民間工事における週休2日の取り組みは公共工事よりも遅れています。しかし、「働き方改革関連法」が令和6年4月から建設業にも適用され、「休みがとれない」「労働時間が長い」といった環境が大幅に改善したことは間違いありません。
国土交通省が公表しているデータでも、平成26年度の建設業の年間実労働時間は2,128時間でしたが、令和4年度には2,022時間となる等、大幅に減少しています。建設業全体で取り組んできた長時間労働の是正対策が、確実に実を結んでいるのです。
さらに、労働基準法が改正され、36(サブロク)協定(※1:36(サブロク)協定とは)で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられることになりました。これがいわゆる「働き方改革関連法」というものです。建設業にも令和6年4月から適用されています。
筆者が、インフラ関係の公共事業を手がける会社に勤め始めたのが14年前。その頃の休みは「日曜日」、「お盆」、「年末年始」のみでした。建設業はなぜか祝日に仕事をする文化が残っており、年間休日はおそらく75日程度だったでしょうか。もちろん、現在の労働基準法では、違法となってしまう長時間労働もしていました。繁忙期は特にきつかったです。しかし、現在はそのようなことはありません。建設業界全体の取り組みと法律が、労働者を守ってくれているのです。
国は公共工事設計労務単価/全国・全職種の平均値を、平成25年度の15,175円から令和6年度の23,600円まで12年連続で引き上げており、建設業者に積極的な賃上げを行うよう促してきました。その効果もあり、建設業就業者の1日当たりの賃金が平成23年度は14,933円でしたが、令和4年度末には18,722円まで上昇!国は今後も未来を支える担い手の確保のため、賃上げに取り組む必要があると明言しています。
令和5年3月29日、斉藤国土交通大臣(当時)と建設業団体の意見交換会が行われ、「技能労働者の賃金が概ね5%上昇することを目指して、全ての関係者が可能な取り組みをすすめること」、「全ての関係者が週休2日(4週8閉所等)の確保により工期の適正化に取り組むこと」が申し合わされました。
つまり、建設業の休みは今後も増え続け、給料は上がり続けます。
官民一体となって、建設業従事者の労働環境改善に取り組んでいるのです!
建設業は基本的に「何かを作る仕事」です。建設業で作るものには公共施設、マンションなどの建物を始め、道路や橋などがあり、その土地に長く残ります。関わった仕事が、地図に残ることもあるでしょう。「この学校はお父さんが作った」、「この道路の材料はお母さんが働いている会社の製品」など、自分の仕事が世代を超えて残っていく素晴らしさは、建設業でしか得ることができません。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と修飾の促進を図ることが目的です。資格を取りたい人は、厚生労働省が認可するスクール(通信教育も可)に通うと、訓練終了後に受講費用の一部がハローワークから支給されます。教育訓練の内容は、「専門実践教育訓練」、「特定一般教育訓練」、「一般教育訓練」の3種類。建設業で必要な資格は「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」に該当しています。教育訓練給付を受けるには、雇用保険の加入期間などの条件がありますが、「特定一般教育訓練」なら「受講費用の40%(上限20万円)+α」、「一般教育訓練」なら「受講費用の20%(上限10万円)」の給付を受けることが可能です。
詳細は厚生労働省のサイトに掲載してあるので、一度チェックしてみて下さい。
資格を取得するメリット
建設業を転職先の候補としておすすめする理由は、給料や休みなどの条件面だけではありません。建設業でしか得られないやりがいの多さもその理由の1つ。また建設業は、キャリアパスが幅広く、自分の得意分野で活躍することができます。
社会貢献度が高い
建設業は、道路・電気・水道など、全てのインフラを支えています。
インフラ整備が、人々の生活にかかすことができない重要な仕事であるのは周知の事実です。
また、完成した建物や構造物が人々の生活を支え、馴染み、その土地に長く残ります。非常に社会貢献度が高く、やりがいを感じる仕事です。
ものづくりの面白さを実感できる
建設業はものづくりの醍醐味を大きなスケールで体験できます。
ものづくりが好きな人にとって、建設業は理想の職場といえるでしょう。
社会に欠かせないインフラや建物をコツコツと長い時間をかけて造り上げ、自分の手で形にできる感動は建設業でしか味わうことができません。
手に職がつく
建設業は経験を積めば積むほど技術が磨かれます。
多くのスキルや経験を得ることで、どの現場においても重用される人材になれるしょう。
また、経験を積んだ人材は、都市部だけでなく、地方の企業にとっても貴重です。転職する際は自分の好きな土地を選び働くことができ、ライフデザインの幅が広がります。
災害時の復興を支援できる
地震や台風、豪雨などの自然災害は年々増加しています。
崩れた道路の復旧、がれきの撤去など被災地の復旧や復興には建設業者が必要不可欠。
復興に携わることは、被災者のためになるだけでなく、社会に希望を与える仕事です。現場での仕事は誇らしく、やりがいを感じることができるでしょう。
大きなプロジェクトに関われる
ビックプロジェクトに関わる点も建設業の特徴の1つです。
設計者、現場監督、職人など様々な専門職が協力し合い、建物や構造物を完成させたときの大きな達成感は建設業ならではでしょう。例えば2020年、東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い行われた、新国立競技場の建設・インフラ整備などでは、11万5千人が建設現場で働いていました。11万5千人が1つの目標に向かい仕事に取組み、完成したときの達成感は想像をはるかに上回ります。
建設業には、現場作業だけではなく、施工管理や設計、営業、プロジェクトマネジメントなど多彩な仕事内容があります。自分の目標、好き・嫌い、得意・不得意を会社に伝え話し合うことで、自分に適した仕事に従事することが可能です。特に、人手不足に直面している建設業では、求職者との仕事内容のミスマッチを防ぎ、優秀な人材を確保するため、キャリアパスを明確にすることに取り組んでいます。インターネットで「会社名 + キャリアパス」と検索すると大抵の場合、情報を得られます。気になる会社を見つけた方は、事前にチェックしておきましょう。
建設業は、安定性が高く将来性のある業界の1つです。
住宅需要、商業施設など、新築工事は途切れることなく発生し、建設業を支えています。
また近年、高度経済成長期に整備された、マンション・道路・橋・下水道などが老朽化し、改修が大きな課題になっているのは周知の事実です。たとえ景気が悪くなったとしても、インフラ整備や耐震化工事・修繕工事は必ず行わなければなりません。モノを作るだけではなく、新しい需要が次々に生まれているのです。
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、建設業で働く人を対象に保有資格・社会保険の加入状況や現場の就業履歴などを、業界を横断的に登録・蓄積して活用する仕組みです。2025年1末日現在で159.6万人の建設業従事者が登録しています。建設業では、個人の能力を評価する業界横断的な統一の仕組みがなく、スキルアップが処遇の向上に繋がらないという問題を抱えていました。CCUSでは、建設業で働く人が、いつ、どこに、どの職種で、どの立場で働いていたのかを、就業履歴として電子的に記録・蓄積できます。資格の取得や講習の受講履歴の登録も可能で、企業にも働く人にもメリットのあるシステムです。また転職する際も役に立ちます。CCUSの内容を提示すると、その人がどのようなキャリアを歩んできたか、どんな資格を持っているのかを、エントリーシートや職務経歴書以上に雄弁に語ってくれます。建設業界はCCUSの登場により、自分のこれまでの頑張りや、持っているスキルが、正当に評価される業界になっているのです。
ひとえに建設業といっても、施工管理・設計・営業・経理など様々な職種があり、それぞれ仕事内容が全く異なります。以下にそれぞれの仕事内容を簡単に解説しました。転職する際は、自分が希望する職種とのミスマッチがないか、あらかじめ確認しておきましょう。
施工管理
工事現場において、工事の計画から完成まで、あらゆる面で管理・監督する仕事。工事の進捗状況の管理、現場内の安全や作業環境の整備、作るモノや材料の品質、工事費の管理など仕事内容は多岐にわたります。業界では「セコカン」と呼ばれることも。仕事内容が多く、始めは大変かもしれませんが、建設業を支える花形の職種です。また、最近では女性の方も増えてきました。前述のとおり、施工管理は仕事内容が多岐にわたります。仕事の特性を考えると、マルチタスクが得意な女性の方が向いているのかもしれません。
現場作業員・職人
現場監督の指示のもと、機械や道具を使い、実際に建物や構造物を作っていく仕事。経験を積むことでその道のスペシャリストとなり、「職人さん」と呼ばれることも。高い技術力を活かし、建設業の中で最も独立・開業を目指せる職種でもあります。人手不足、働く人の高齢化が進む建設業において「職人さん」は非常に貴重な存在です。ものづくり好きな方、将来、独立・開業を目指している方は、ぜひチェックしてみて下さい。
設計
設計の仕事内容は「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つに分かれています。
意匠設計はクライアントからヒアリングを行い、建築物の外観や内装のデザインを担当します。構造設計は経年劣化や自然災害にも耐えられるよう、建設物の強度や耐震性を設計。設備設計は電気や給排水などのインフラを整える仕事です。それぞれで仕事内容や求められる能力に差があるので、転職する際はしっかり確認しておきましょう。
営業
建設業の営業の役割は、自社の建設工事の品質・価格・安全性をアピールし、会社の売上を伸ばすことです。主な営業先は民間と公共事業の2種類。民間への営業先は、土地所有者や企業となり、建物や構造物・設備の建設を提案します。また、国や自治体が発注する工事の入札に参加し、公共事業の受注を目指すのも営業の大切な仕事です。建設業は取引額が大きいため、プレッシャーを感じることがあるかもしれませんが、その分達成感が大きく、やりがいのある職種であることは間違いありません。
建設業で働く上で、資格取得は切っても切れない存在ですが、その仕組みは非常に複雑。建設業許可の種類・請負金額・工事の種類・工事の規模で必要になる資格が異なります。また国家資格になると、一定の経験年数が受験資格に設定されているものがほとんどです。建設業への転職の際は、資格にこだわりすぎず、入社してから、その会社と職種に合った資格を取得すると良いでしょう。以下に職種毎に必要となる可能性の高い資格を紹介します。是非参考にして下さい。
設計
1級建築士、2級建築士…
取得する際、一級建築士は大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等で指定科目を履修し卒業するか、2級建築士資格が必要。2級建築士は、大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・職業訓練校等において、指定科目を履修し卒業するか受験資格として7年の実務経験が必要。
施工管理
1級施工管理技士、2級施工管理技士…
現場作業員・職人
従事する現場に必要な、技能講習と特別教育
例)技能講習の場合
例)特別教育の場合
経理
1級建設業経理士、2級建設業経理士…
受験資格なし、どの級からでも受験可能
本特集では、建設業の休み事情と魅力・やりがい、転職をおすすめする理由を解説しました。
以下は特集の内容のまとめです。
建設業の労働環境は大きく変わっており、大幅に改善しています。また、今後もさらに環境が良くなることも間違いありません。また、自分の頑張りや経験・資格が正当に評価される、非常にやりがいと魅力のある業界です。
経験のない異業種に転職する場合、転職したてが大変なのはどの仕事でも同じこと。
転職活動に取り組んでいる方、これから取り組もうとしている方は、本特集を参考に、建設業への挑戦を検討してはいかがでしょう?
建設業界は未経験の方含め、幅広く門戸を開いています。
※1:36(サブロク)協定とは
1.時間外労働の上限は、「月45時間」、「年360時間」となり、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできない。
2.臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合でも、「年720時間」、「複数月平均80時間以内(休日労働含む)」、「月100時間未満(休日労働含む)」を超えることはできない。また、月45時間を超えることができるのは、年間6回まで。
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