ケース別転職対策
仕事内容ややりがい、向いている人についてわかりやすく解説
IT業界に興味がある人や、IT業界への転職を考えている人のなかには、「専門知識や実務経験がなくても、未経験からIT職種にチャレンジできるだろうか」と思っている人が少なくないでしょう。
そうした人たちにとって、「テストエンジニア」はIT業界への入り口になりえる職種。テストエンジニアの場合、エクセルやワードなどオフィスソフトの基本操作ができれば、未経験でも実務をこなすことが可能です。
本記事では、無資格・未経験からテストエンジニアになった筆者の経験をもとに、テストエンジニアの仕事内容や求められるスキル、やりがいや向いている人の特徴などを詳しくご紹介します。
テストエンジニアの職が気になっている人やテストエンジニアへの転職を考えている人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
ソフトウェア開発において、システムの正確な動作と品質を保証するには、テストエンジニアの存在が不可欠です。
まずは、テストエンジニアの「基本的な役割」と「具体的な仕事内容」を確認していきましょう。
テストエンジニアの基本的な役割は、開発されたソフトウェアの不具合(バグ)や仕様とのズレ(仕様書の内容と異る動作)、ユーザビリティの問題(操作性)などを発見し、開発チームにフィードバックを提供することです。
たとえば、ボタンをクリックしても画面が切り替わらない場合は、不具合(バグ)として報告します。また、仕様書で「パスワードは8文字以上」と定められているにもかかわらず、「6文字で登録できてしまうケース」は仕様とのズレに該当。「画面構成が複雑で直感的に操作しにくい」といった問題はユーザビリティの課題として指摘することがあります。
こうしたテストエンジニアからのフィードバックは開発プロセスの改善に活用され、最終的にはソフトウェア全体の完成度を高める上で重要な役割を果たします。つまり、テストエンジニアは単に不具合を見つけるだけではなく、製品の品質を根本から支える存在として、信頼できるソフトウェアの提供に大きく貢献しているのです。
ソフトウェアの開発方法によって、テストエンジニアの仕事内容は異なります。 ここでは、開発方法の違いごとにテストエンジニアの仕事内容をご紹介します。
ウォーターフォール開発におけるテストエンジニアの仕事内容
ウォーターフォール開発とは、設計から開発、テストまでを順番に進めていく開発手法のこと。この場合、テストエンジニアの作業も段階ごとに分けて行われます。
テストエンジニアの業務は、仕様書や要件定義書に基づいてテスト計画を立案し、具体的なテストケースを作成。その計画に沿ってシステムが仕様通りに動作するかを検証します。不具合が発見された場合は、詳細な状況や再現手順を開発チームに報告。修正後の再テストも実施します。なお、同じテストを繰り返す必要がある場合には、自動化ツールを用いた効率化も担当することがあります。
ウォーターフォール開発では各工程の役割が明確に分かれているため、初心者でも業務の流れを理解しやすく、計画的に作業を進めることが可能です。
アジャイル開発におけるテストエンジニアの仕事内容
アジャイル開発とは、短期間のサイクル(スプリント)で、機能ごとに開発を進めていく開発手法のこと。アジャイル開発の場合、テストエンジニアは開発チームの一員として、短い開発サイクルごとに変化する仕様に柔軟に対応しながら業務を進めます。
たとえば、テスト計画や手順はその都度見直し、開発メンバーと連携しながら品質向上に取り組みます。テストはテストエンジニアだけでなく、開発メンバーも協力して実施し、チーム全体で品質を担保。不具合が発生した際は、すぐに情報を共有し、修正後の確認までを迅速に行います。
また、効率化を図るために自動化テストを導入し、継続的インテグレーション(CI)環境(コードの変更を自動でチェックして、すぐに問題を見つける仕組み)での自動実行に対応することも。
アジャイル開発は、未経験者にとってはハードルが高い面もありますが、積極的に学ぼうとする姿勢とチームのサポートがあれば、未経験でも十分に対応可能です。
本チャプターでは、テストエンジニアとして活躍するために必要なスキルをご紹介します。未経験でも実務のなかで意識的に取り組めば、習得可能なスキルですので、ぜひ参考にしてみてください。
テスト実施者としての視点はもちろん、ユーザーの立場で物事を考える視点もテストエンジニアには欠かせません。こうした視点があれば、仕様書からは読み取れないテスト項目の課題や不具合に気づきやすくなります。
たとえば、はじめての製品に触れる人の場合、説明書を読むことなく、操作手順とは異なる動きをする可能性がある――こうした考えを巡らせることで、自分とは異なるユーザーの視点を持てるはずです。
また、テストを実施する際は、流れ作業のようにテスト項目をこなすのではなく、「実際にユーザーが行いそうな操作フロー」を想定したうえで、実務に取り掛かると良いでしょう。
テストエンジニアにおいて、円滑なコミュニケーション能力は不可欠です。
実際の現場では、開発担当者やプロジェクトマネージャー、カスタマーサポート、営業など、多岐にわたる職種の人と関わることになります。
こうした関わり合いのなかで、テスト計画や実施項目、仕様確認、不具合報告をする際には、受け手が正確に理解できる情報伝達が求められます。情報を曖昧にしたまま伝えると、意図が正しく伝わらず、修正対応に余計な手間や時間がかかることがあるからです。
このような状況を避けるためにも、相手の技術的な理解度や立場を意識したうえで、要点を押さえた伝え方を心がけましょう。その姿勢が、結果的にプロジェクトの進行を加速させることにもつながります。
テストエンジニアには、開発者が気づきにくい不具合や課題をわずかな違和感と疑問から見つけ出す「観察力」が求められます。
観察力があると、文言の微妙な違いや、特定の条件下でのUIの乱れといった、見落としがちな不具合を発見できます。こうした問題を事前に見つけることで、ユーザーが画面や操作の意味を取り違えてしまう状況も避けられるでしょう。
観察力を鍛えるには、日頃から「違い」に意識を向けることが効果的。たとえば、普段使うアプリの画面構成や動作の違和感に目を向けるクセをつけていれば、自然と観察力が磨かれていくはずです。観察力を磨くことは、テストエンジニアとしての価値を高めることにもつながります。ぜひ、日々の観察を大切にしてみてください。
テストエンジニアは表舞台に立つ機会は少ないものの、実際には開発現場において欠かせない重要な役割を担っています。本チャプターでは、テストエンジニアのやりがいについてご紹介します。
テストエンジニアのやりがいは、「自分が発見した不具合が解消され、製品がより完成度の高いものへと仕上がっていく」という実感を持てることです。不具合は、ユーザーに混乱やストレスを引き起こす原因となります。実は、こうした問題を事前に防げるかどうかが、製品の信頼性を大きく左右するのです。
不具合があった場合は、テスト結果を開発チームにフィードバックし、修正箇所の再テストを行います。その際に「動作の安定性が高まった」、「操作性が向上した」といった改善を確認できた瞬間、製品の品質向上に寄与できた手応えと、深い充実感が得られます。
また、テストエンジニアとしての経験を積むことで、自身のスキルや知識が着実に向上していると実感できる点も大きなやりがいのひとつ。
絶えず進化し続ける技術に対応しつつ、最適なテスト方法を模索・実践する――こうした積み重ねは、将来のキャリア形成にも直結します。テストエンジニアとしての信頼を得ることで、上流工程(テストリーダー、マネージャーなど)へのステップアップといったキャリアパスも築けるでしょう。
テストエンジニアとして活躍するには、専門的なスキルだけでなく、性格や考え方も大きく影響します。ここでは、テストエンジニアに向いている人の特徴を3つご紹介します。
テストエンジニアに求められる資質のひとつが、優れた観察力と違和感に対する高い感受性です。
ソフトウェアの挙動や画面表示のわずかな変化に気づけるかどうかは、品質向上に直結する重要な能力。たとえば、操作後の画面遷移に通常とは異なる遅延が見受けられるといった、ごくわずかな差異も見逃さない姿勢が必要です。また、「漠然とした引っかかりを感じる」「普段と雰囲気が異なる」などの違和感に注意を向け、その背景にある要因を掘り下げて検証する力も欠かせません。
テストエンジニアとしての適性がある人は、日常生活においても「環境」や「人の変化」に敏感で細かい点によく気がつきます。こうした些細な違和感を見逃さずに頭に留められる人は、テストエンジニアに向いているでしょう。
テスト業務において大切なのは、「定められた手順を正確に実行し、結果を正しく記録・報告すること」です。一見、簡単そうに思える作業ですが、誤ったテスト結果をそのまま開発チームに伝えてしまうと、リリース後に重大な不具合が発覚することにもなりかねません。
正確性や慎重さは、日常生活の中にも表れます。たとえば、レシピ通りに料理を作るのが得意な人や、説明書に従って家電を問題なく設定できる人などは、「決められたルールや手順を丁寧に守る力」が自然と身についているはず。このような力を自然に発揮できる人は、テストエンジニアとしての適性が高いといえるでしょう。
テストエンジニアには、「なぜ不具合が起きたのか」「どのような条件で再現するのか」といった問いに対して、粘り強く検証を重ねる力が求められます。原因がすぐにわからないバグにも冷静に向き合い、問題を突き止めなければなりません。
こうした姿勢は、日常生活の中でも培われていきます。たとえば、家電の不調に対して説明書やネットで原因を調べ、解決に導ける人は、物事を最後まで掘り下げて考える探究心が自然と備わっているはず。目の前の問題を根気強く解決しようとする姿勢も、テストエンジニアにとって大きな強みとなるでしょう。
ここでは、未経験からテストエンジニアを目指すための具体的なポイントや心構えを確認していきましょう。
テストエンジニアになるのは決して難しいことではありません。実際、筆者もかつて、IT業界未経験・無資格の状態からテストエンジニアへの転職を成功させました。重要なのは、IT業界で働きたいという熱意や具体的な目標をしっかりと面接で伝えることです。
加えて、テストエンジニアへの転職は無資格でも可能ですが、独学でIT業界に関する勉強をしていることや、具体的にどのような教材やツールを使用しているかを面接時に伝えられれば、より好印象を与えられます。たとえば、「ISTQBの基礎試験に向けて勉強中です」や「Seleniumの基本操作を独学で学んでいます」といった努力の過程を示すのも効果的でしょう。こうした積極的な学習意欲が、未経験者の転職を後押ししてくれます。
また、正社員としての採用が難しい場合は、派遣や契約社員、インターンシップなどからスタートし、実務経験を積むのも有効です。求人サイトや人材紹介会社の未経験歓迎案件をこまめにチェックし、柔軟にチャンスをつかむ姿勢で転職活動に臨みましょう。
その際、未経験からの挑戦に戸惑うこともあるでしょう。ですが、新しいことを学ぶ前向きな意志があれば、未経験からでもテストエンジニアとしてのキャリアを築くことは十分に可能です。必要なのは完璧な経歴ではなく、前向きに学び続けようとする意志と行動力です。地道な努力を重ねていけば、焦らずとも着実に道は拓け、自身の可能性を高めることができるでしょう。
テストエンジニアは、一見地味な仕事に思われがちですが、製品の品質を支える重要なポジションです。また、高品質な製品を世に送り出すうえで欠かせない存在であり、不具合の早期発見や改善を通じて、ユーザー満足度の向上や企業の信頼性確保にも大きく貢献しています。地道ながらも確かな成果が求められる職種だからこそ、やりがいも大きく、キャリアの柱として選ぶ価値がある仕事といえるでしょう。
テストエンジニアに興味がある人や転職を検討している人は、本記事を参考に「必要なスキル」や「向いている人の特徴」などをチェックし、自分に適したキャリアかどうかを見極めてみてください。
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