ケース別転職対策
製造業からIT業界への転職を考えている人向けに、経験を活かせる職種や成功のポイントを紹介
「このまま製造業の仕事を続けていて良いのだろうか」――製造業の仕事に携わるなかで、体力面での限界や将来への不安を感じ、IT業界への転職を考える人が少なくありません。
実は、製造業からのキャリアチェンジを考える際、IT業界は有力な選択肢のひとつ。
経済産業省の調査(※)によると、2030年にIT人材は約79万人が不足すると予測されており、IT業界は深刻な人材不足に直面しています。こうした背景もあり、近年、IT業界は未経験者でも挑戦しやすい環境が整いつつあります。
特に20代後半〜30代後半であれば、社会人経験やポテンシャルが評価されやすく、異業種からのキャリアチェンジも実現しやすいでしょう。
本記事では、製造業からIT業界への転職を検討している人に向けて、IT業界でも役立つ製造業のスキルや転職を成功させるポイント、おすすめのIT職種について詳しく解説しています。製造業での経験を活かし、IT職種への転職を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
※参考:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 「IT分野について」
製造業で培ったスキルは、IT業界でも役立ちます。まずは、製造業からIT業界への転職を目指すうえで、特に強みとなるスキルを3つご紹介します。
製造業の現場において、「より早く、より正確に」作業するためには、生産性や品質を高める日々の業務改善が欠かせません。作業工程の中にある効率化の余地を見つけ出しては見直す――こうした業務改善を図る力は、IT業界でも役立つ重要なスキルです。
たとえば、IT業界でのシステムや業務フローの改善提案、業務自動化(RPA)の設計などの場面において、製造業で培った、業務を改善・効率化するスキルが活かされます。
また、業務全体を俯瞰して最適化する視点があれば、ITエンジニアやITコンサルタントとして仕事をする際も大きな武器になるでしょう。
製造業では、製品の不具合やトラブルが発生した場合、その原因を迅速に突き止め、再発防止に取り組むことが重要です。トラブルを分析し、根本原因を特定する「問題解決力」は、システムトラブルの原因分析やバグ対応が求められるIT業界においても大いに役立ちます。
製造業を経験して得た問題解決力は、プログラマーやITサポート、QAエンジニアといった職種で確かな強みとなるでしょう。
製造業では納期を守るために、各工程の進捗管理や関係部署との連携が欠かせません。部品の手配や工程の調整、情報共有などを通じて、全体の流れを把握し、スムーズに進行させる力が求められます。
IT業界においても、複数の担当者と協力しながらプロジェクトを進める場面が多く、スケジュール管理・プロジェクトの進捗管理は不可欠です。そのため、製造業で培った工程管理力やチームワークも、IT業界で役立つスキルといえるでしょう。
本チャプターでは、製造業からIT業種業界への転職を考えている人におすすめのIT職種を3つご紹介します。
RPA(アールピーエー/Robotic Process Automation)エンジニアは、日々の定型業務を自動化し、業務効率を高めるIT職種。データ入力や帳票作成といった繰り返し作業を自動化するために業務のヒアリングやフローの整理・分析を行い、「UiPath(ユーアイパス)」や「WinActor(ウィンアクター)」などのRPAツールを用いて、自動化の仕組みを構築します。
RPAエンジニアにはある程度の専門知識が求められますが、「ドラッグ&ドロップ操作」で直感的に扱えるRPAツールを業務で使用することが多く、特別なITスキルがなくとも始めやすいのが特徴です。ただし、一部の場面ではプログラミングの知識が必要になる場合もあるので、基礎知識は事前に身につけておくと良いでしょう。
RPAエンジニアは「IT業界に興味はあるけれど、いきなりエンジニア職は不安…」と感じている人におすすめの職種。製造業で培った「ムダの削減」や「工程改善」の視点は、業務プロセスの最適化という形でRPA開発にも活かされます。製造業からIT業界への転職を目指す人にとって、RPAエンジニアはIT職への入り口として有力な選択肢です。
QA(キューエー/Quality Assuarance)エンジニアは、開発されたシステムやアプリが正しく動作し、安定して使えるかを検証するIT職種です。仕様に沿ってテストを行い、不具合があれば原因を特定し、開発チームへフィードバック。こうしたプロセスを通じて、製品の品質向上に貢献します。
QAエンジニアの業務には、製造業で培ったスキルが活きます。たとえば、図面通りに正確に作業を進める力や異常を見逃さない気づき、品質や安全を守る意識、報告や改善提案の経験などは、いずれもQAエンジニア業務と親和性の高い要素。つまり、製造業での経験はQAエンジニアとしての土台になるといえるでしょう。
また、未経験からでも挑戦しやすく、将来的にはテストの自動化や品質管理体制の構築といった上流工程へのステップアップも可能。QAエンジニアは、製造業からIT業界への第一歩におすすめしたいIT職のひとつです。
ネットワークエンジニアは、企業内のネットワークやインターネット通信の基盤を設計・構築・運用・監視・保守する職種。社内のシステムやサービスが「当たり前に」機能する――そうした“日常の安心”を支えます。
ただ、ネットワークエンジニアの仕事は専門性が高いため、未経験者の場合、「運用・監視」の仕事からスタートするのが一般的です。
ネットワークエンジニアには、運用・監視の業務において、ネットワークの状態を常時監視し、異常の早期発見と対応によって安定稼働を支えることが求められます。また、ネットワーク機器の設定や障害対応では、精密な作業と迅速な判断も不可欠です。これらの業務には、製造業で培った「仕組みを理解する力」「手順を守る正確さ」「冷静な判断力」が活かされます。
ネットワークエンジニアへの転職は未経験であっても、資格の取得(※CCNAなど)や基礎知識を身につけておくことで目指せるおすすめのIT職。身につけたスキルは「手に職」となり、将来的には設計・構築など上流工程へとキャリアを広げることも可能です。
製造業からIT業界への転職を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。本チャプターでは、転職を成功に導くための3つのポイントをご紹介します。
異業種からIT業界を目指す際に「これまでの経験やスキルが通用するだろうか」と不安を感じる人もいるでしょう。ですが、製造業で培ったスキルの多くは、IT業界の現場でも強みになります。
たとえば、製造業での経験を通じて身につけた「手順を守って正確に作業する力」や「トラブル時の冷静な判断力」「安定稼働や安全性を重視する姿勢」は、ネットワークエンジニアやQAエンジニアの職種においても活きるスキルです。
こうしたスキルを転職活動時に「ただの前職での経験」として面接担当者に伝えるのではなく、「IT現場でも通用する強み」として伝えることが重要です。そのためには自分のこれまでの経験を棚卸しし、自分にはどういったスキルがあり、そのスキルをIT業界で働く際にどう活かせるのかを明確にしておきましょう。
これまで積み上げてきた経験には、自分が思っている以上の価値があります。自分の強みに自信を持ち、次のキャリアへとつなげていくことが大切です。
製造業からIT業界へ転職を目指すのであれば、「学ぶ意欲と姿勢」をしっかりと採用担当者に示すことが重要です。
IT職では専門的な知識を求められることが多いですが、未経験者歓迎の求人も数多く存在します。そうしたチャンスを逃さないためにも、日頃の学習や資格取得を通じて、IT業界で働くための意欲と行動力を採用担当者にアピールしましょう。
なお、ネットワークエンジニアを目指すのであれば「CCNA」、RPAエンジニアの場合は「RPA技術者検定」、QAエンジニアであれば「JSTQB(ソフトウェアテスト技術者資格)」といった形で、目指す職種に関連した資格を取得することで、転職活動において大きなアピールポイントになります。資格は基礎知識があることの証明になるだけでなく、「この分野で働きたい」という本気度を企業に伝える強力なツールです。
ただし、資格取得を目的にしないことも大切。学んだ知識を実際の業務でどう活かせるかを自分なりにイメージしながら、学習を進めましょう。
製造業で培った経験にITスキルを掛け合わせることで、入社後の実務でもスムーズに力を発揮できます。
IT業界には多種多様な職種があり、それぞれに求められるスキルや経験は大きく異なります。製造業からIT業界への転職を目指す際には、未経験者にも門戸が開かれている職種を選ぶことがポイントのひとつ。その理由は、転職を実現できる可能性が高まるだけではなく、入社後の早期活躍にもつながるからです。また、製造業で培った経験を活かせる職種を見極めることにより、スムーズなキャリアチェンジの第一歩となるでしょう。
特に、前のチャプターでも紹介した「RPAエンジニア」「QAエンジニア」「ネットワークエンジニア」といった職種は製造業の経験が活かしやすく、未経験からの採用実績も豊富です。
未経験からのIT業界への転職においては、適切な職種選びがその後のキャリアを大きく左右します。採用されやすい職種を見極め、製造業での経験を強みに変えていくことで、IT業界での新たな一歩を踏み出せるでしょう。
製造業からIT業界への転職は、決して不可能なことではありません。実際、特別な経験や資格もない30代の筆者は、製造業から未経験の状態でIT業界への転職を成功させました。
製造業で積み重ねてきた経験・培ってきたスキルは、IT業界で働くうえでも、さまざまな場面で役立ちます。
製造業からIT業界への転職を検討している方は、本記事を参考に「おすすめのIT職」や「転職を成功させるコツ」などをチェックし、自分の可能性を信じて新たな一歩を踏み出してみてください。
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