ケース別転職対策
介護を理由に離職したあとの再就職を成功させるため、知っておきたいポイントは?
総務省の調査によると、介護のために離職する人の数は年間で約10万人にものぼります※。
家族を介護しながら今までと同じペースで仕事をすることは、多くの社会人にとって非常に大きな負担になります。離職者の多さは、その事実を端的に物語っていると言えるでしょう。
介護のために離職したあとの現実は、決して優しいものではありません。前述の調査では、介護離職を経験した人のうち、再就職をした人(調査時点で仕事に就いていた人)の割合は、離職者全体の約25%。
つまり、介護に専念するために離職したあと、転職に成功した人は4人に1人に過ぎません。この統計データを見る限り、介護離職を経験した多くの人が、再就職の難しさと向き合っていると言えるでしょう。
働きながらの介護に疲れると、「いっそ会社を辞めて介護に専念したい」という考えにとらわれます。
ただし、離職すればその時点で収入はストップし、親の年金のみで生活する事態にもなりかねません。仮に一定の蓄えがある場合でも、貯金や将来の年金が目減りすることによって、ご自身の老後が影響を受ける可能性が高くなります。
また、「介護に専念したい」という思いで離職をしても、精神面や肉体面での負担は思ったほどには軽減されない場合もあります。
離職前までは、仕事が一時的に介護から離れる時間となっていたものが、離職することで外部との接点がなくなり、介護と24時間向き合わなければならなくなるためです。
このように、介護のために会社を辞めても、状況が楽になるケースは限定されており、経済的な不安はむしろ大きくなるのが、介護離職の最大のデメリットです。
実際に介護に取り組み、ある程度慣れてくれば、パターンやコツがつかめてきます。少し余裕ができればデイサービスや訪問介護など、要介護者が利用できるサービスの知識も増えていくでしょう。
そのため、仕事と介護の両立に疲れて一旦離職してしまった、という方も、介護のペースがある程度、整ってきた段階で、ご自身のキャリアと将来に向けて再就職を検討してみましょう。
仕事を再開できれば、収入やキャリアの不安を解消し、介護を一人で抱え込むことから逃れられるはずです。
今回は、「介護離職からの再就職」にスポットを当てて、介護のために離職中の方が再就職する際のポイント、転職支援サービスなどの情報を解説します。
再就職を目指すうえで最初に行いたいのが、今までの仕事で得たスキルや経験、所持している資格や免許などをすべて洗い出し、リスト化してみる作業です。
これらをもとに、自分の得意分野や強みにどのようなものがあるかを整理し、再就職の際の企業選びや志望動機などにつなげましょう。
一見、仕事とは無関係に思える趣味やボランティア活動などの中にも、仕事に活かせるスキルが眠っている可能性があります。
スキルや経験の棚卸しを、自分一人で行うことが難しい場合は、求職者と企業を仲介する転職エージェントに相談してみるのも1つの方法です。
転職エージェントでは、登録面談の際に、キャリアアドバイザーが現在までの職歴等をヒアリングし、求職者それぞれの強みに落とし込む作業を行います。
再就職に前向きに取り組む場合は、介護中であることも告げつつ、スキルの整理や企業選びなどのアドバイスをもらうために利用してみても良いでしょう。
リクルートグループが運営する日本最大の転職エージェント。あらゆる業界・職種を網羅しており、大手・優良企業から中小・ベンチャーまで幅広い求人がそろう。公開求人に加えて、通常の転職サイトには掲載されない非公開求人も充実している。日本全国の主要都市に拠点を持ち、首都圏はもちろん、地方の転職にも強い。
パソナが運営する転職エージェント。人材派遣業で培った企業とのコネクションをベースに、豊富な正社員案件を持つ。中高年や女性の転職にも積極的。それぞれの業種・職種ごとに専任のキャリアアドバイザーが転職サポートを担当し、書類添削や面接対策、求人の紹介など、1人1人に合ったアドバイスを行う。
また、介護中であっても、興味のある業界の最新情報を収集したり、資格取得にチャレンジしたりと、再就職を見すえた活動はできるはず。
SNSで情報を発信し他人とつながりを持つことや、パソコンの知識を学び直すことなどは、業界を問わず今後のビジネスで活きる可能性が高いため、介護中のスキルアップとしてもおすすめです。
最初は介護中の気分転換も兼ね、気軽に取り組んでみると良いでしょう。
再就職の準備として次に行いたいのは、周囲と協力して介護の態勢を整えることです。
具体的には、介護サービスの利用を増やしたり、兄弟・親戚・知人と連携するなどして、介護の一部を外部に依頼できるようにしましょう。
地域包括支援センターや市区町村などの相談窓口では、介護保険の利用をはじめ介護全般に関する相談を受け付けており、様々な情報提供を受けることができます。
また、家族や近所の人に協力を求めることも大切です。現在の状況について説明し、再就職に当たって手を貸してほしいことを頼んでみましょう。遠方に住む兄弟などの場合、日常的な介護を頼むことは難しいとしても、「資金面で協力してもらう」「定期的に親に電話をかけてもらう」等、ほかの手段で助けてもらうことは可能です。
介護をしながら再就職を目指す際、企業との面接などで、急な欠勤・早退が必要になる可能性や、その頻度等について質問を受けることも多いでしょう。
周囲と話し合って、普段の介護や緊急時のフォロー体制を決めておくことは、再就職後の介護をスムーズに進めるだけではなく、企業側のこのような懸念に対して、きちんと対策を講じていること、責任を持って仕事に当たろうとしていることをアピールする効果もあります。
介護をしながら再就職を目指す場合、企業側の介護に対する理解も不可欠です。
たとえば、介護休暇や看護休暇、時短勤務、テレワークなどの制度が整っている企業であれば、介護をしながらでも仕事を続けやすいでしょう。
転職エージェントやハローワーク等で求人紹介を受ける場合は、介護中であることを伝え、どのような時間帯・条件(残業の可否等)であれば働き続けられるかを詳しく説明しておきましょう。
ただし、企業選びで注意したいのは、このような制度面ばかりに注目して応募企業を決めてしまうことです。
介護休暇やテレワークといった制度は、企業側が自社に貢献してくれる社員に働きやすい環境を提供するために整備しているものです。
つまり、応募の際には、自分自身の強みと、企業側の求める人物像(スキル・経験で自社に貢献してくれる働き手であること)が一致していなければ選考を通過することはできません。
企業選びでは、制度面に着目しつつも「ポイント その1」で整理したような自分のスキルや経験を活かせる企業かどうかという視点を忘れないようにしましょう。
応募書類や面接における志望動機・自己PRについても、上記のような貢献できるポイント・この会社でやってみたいこと等を中心にアピールすることで内定獲得率を高めることができるでしょう。
なお、可能であれば、再就職に向けて努力したことや、介護中に心がけていたスキルアップなどもあわせて伝えることで、仕事に対する意欲を提示できればベターです。
企業選びの注意点のもう一つは、役職や年収面などで前職のケースを引きずらないようにすることです。
前の会社と同じかそれ以上の待遇を期待して転職活動をすると、応募企業の選択肢が少なくなり、結果として再就職の可能性を狭めてしまうことになります。
「これ以上低い給料では生活していけない」「勤務地が自宅から遠すぎるのは介護に支障が出る」等、年収や勤務場所に一定の条件があることは当然ですが、譲歩できない最低ラインを定めたあとは、待遇に過度にこだわりすぎない姿勢も大切です。
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年間に10万人近い離職者がいることからもわかるように、介護と仕事の両立には非常に困難が伴います。離職をした方も、介護にしっかりと向き合うことを決意したうえでの選択であり、それ自体は、決して誤りでもなければ、後悔すべきことでもありません。
ただし、仕事を辞めて介護に専念することは、必ずしも介護者の精神面や肉体面での負担軽減に繋がらないケースもあります。
離職の期間が長くなれば、経済面でのデメリットが離職によるメリットを上回ることもあるでしょう。
介護で大切なのは、自分や家族だけで介護を抱えこまず、外部の力を借りながら毎日を無理なく、生活していくことです。そのためには、介護をする側が、しっかりとした「経済基盤」と「社会との接点」を持ち、決して共倒れにならないようにする必要があります。
離職期間は、長くなるほど再就職に不利に働くため、離職後、ペースがつかめてきた3ヶ月から1年くらいで再就職のために動き始めることができれば成功率はぐっと高まるはずです。
一度は離職をした方も、介護が軌道に乗り、身辺が落ち着いた段階で、再就職のための活動をスタートしてみてはいかがでしょう。
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